PEST分析とは? 〜マーケティングの外部環境の分析法〜
こんにちは。今回は、PEST分析というフレームワークについてお話しします。
PEST分析とは、自社を取り巻く外部環境を政治・経済・社会・技術の4つの要因に分類し、自社に与える影響を読み解く分析手法です。
PEST分析を行うと自社が抱える課題や市場変化を把握できます。市場の将来性や変化の予測にも活用できるため、マーケティング戦略や施策立案などで役立つ分析手法です。
この記事では、PEST分析の目的や方法、事例をわかりやすく解説します。PEST分析をマスターして、自社の強みを見つけましょう!
PEST分析の目的|市場参入に失敗しないために知っておきたいこと
PEST分析は、技術革新や法改正など自社を取り巻く環境要因を把握し、脅威を予測できる点で有効です。
PEST分析を実施する主な目的としては、以下の2つがあげられます。
- マーケティング戦略や施策の方向性を明確化する
- 市場の将来性や変化を予測する
マーケティング戦略や施策の方向性を明確化する
マーケティング戦略や施策を成功させるためには、実施する方向性を明確化しておくことが重要です。
まずは外部や内部環境を分析して、市場参入の見込みや将来性などを把握したうえでマーケティング戦略や施策立案していきます。
そのため、環境分析はマーケティング戦略や施策の土台となります。
特にPEST分析はマクロ環境を分析できるため、マーケティング戦略や施策を実施する方向性を明確にしたいときに役立ちます。
市場の将来性や変化を予測する
PEST分析では、社会情勢や経済状況など自社での制御が難しいマクロ環境を分析できるため、市場の将来性や変化を予測したいときに役立ちます。
PEST分析で機会に分類された要因をいかして、新規市場への参入や新製品開発などをすることもできます。
一方で自社にとっての脅威を把握しておくと、市場やサービスの撤退判断を下すことも可能です。
PEST分析を活用して外部環境が自社に及ぼす影響を予測して、市場チャンスをいかしたり、時流に合わせたりしたマーケティング戦略や施策を検討しましょう。
PEST分析の方法 |6つのステップで簡単にできるPEST分析のやり方
PEST分析は、マクロ環境を4つの環境要因に分類し、自社にとっての「機会」と「脅威」を洗い出します。
以下の手順で進めていきましょう。
- 環境要因の対象を設定する
- 情報収集し、4つの環境要因に分類する
- 分類した環境要因を事実と解釈に分ける
- 事実を脅威と機会に分類する
- 分析結果を元に施策に落とし込む
ここでは航空会社を例に挙げて解説します。
環境要因の対象を設定する
PEST分析を行う前に、まずは環境要因の対象を設定します。
例えば、航空会社であれば、国内線や国際線、ビジネス客や観光客など、自社がターゲットとする市場や顧客層を明確にしておく必要があります。
また、分析する時間軸も決めておくとよいでしょう。現在の状況だけでなく、将来的な予測も含めて分析することが望ましいです。
情報収集し、4つの環境要因に分類する
次に、自社事業に関連する情報を収集します。
ここでは、正確な情報を収集するためにも、国が収集している各種統計データ、シンクタンクの調査レポート、業界団体から発信された情報、新聞報道や専門誌の特集記事など、信頼性の高い情報を集めることが大切です。
前ステップで収集した情報を、PEST(政治・経済・社会・技術)の4要素に分類します。
自社に影響を及ぼす要素であるかどうか精査しながら、振り分けを行いましょう。
分類した環境要因を事実と解釈に分ける
ここでは、PESTの4つの要素に振り分けた情報について、さらに「事実」と「解釈」への分類を行います。
PEST分析では事実のみを用いることが望ましく、主観による思い込みが入った解釈を事業戦略に取り入れてしまうと結果が伴わないケースが多いです。
例えば、「政治的要因」として「政府は航空業界への支援策を打ち出した」という事実があったとします。この事実から、「航空業界は回復傾向にある」という解釈をするのは、事実に基づいていない可能性があります。
事実と解釈を分けることで、自社にとっての機会や脅威を客観的に判断できるようになります。
事実を脅威と機会に分類する
ここでは、事実として分類した情報について、自社にとっての「脅威」と「機会」に分類します。
脅威とは、自社の事業や収益にマイナスの影響を与える可能性のある要因です。
機会とは、自社の事業や収益にプラスの影響を与える可能性のある要因です。
例えば、「経済的要因」として「新型コロナウイルスの感染拡大により国際線の需要が低下した」という事実があったとします。この事実は、航空会社にとっては明らかな「脅威」となります。
一方で、「技術的要因」として「オンライン会議システムの普及によりビジネス客のニーズが変化した」という事実があったとします。この事実は、航空会社にとっては「機会」となる可能性があります。
例えば、オンライン会議システムを利用して自社のサービスやプランを紹介することや、オンライン会議システムを提供する企業と提携して割引券などを配布することなどが考えられます。
分析結果を元に施策に落とし込む
最後に、PEST分析で得られた結果を元に、具体的な施策や戦略を考えます。
脅威に対しては、その影響を最小限に抑えるための対策を立てます。
機会に対しては、その利益を最大限に引き出すための施策を実施します。
例えば、「政治的要因」として「政府は航空業界への支援策を打ち出した」という事実があったとします。この事実は、航空会社にとっては「機会」となります。
この場合、政府から支援金や税制優遇などを受けるための申請手続きや条件を確認し、必要な書類やデータを準備することが施策となります。
PEST分析の4要素|政治・経済・社会・技術のそれぞれについて詳しく解説
PEST分析では、マクロ環境を4つの要素(政治・経済・社会・技術)に分けて分析します。
ここでは、それぞれの要素がどのようなものであるか、具体的な例とともに解説します。
政治的要因
政治的要因とは、政府や行政機関が行う法律や規制、政策や支援策など、自社の事業に影響を与える可能性のある政治的な状況や動向です。
例えば、以下のようなものが政治的要因になります。
- 消費税率の変更
- 環境規制の強化
- 輸入関税の引き上げ
- 国際関係の悪化
- 選挙や政権交代
政治的要因は、自社のコストや価格、需要や供給、競争環境などに大きな影響を与えることがあります。
例えば、消費税率の変更は、自社のサービスや商品の価格設定や利益率に影響を与えます。
また、環境規制の強化は、自社の事業活動に制約をかけたり、新たな投資や開発を必要としたりします。
政治的要因は、自社でコントロールできないものが多いため、常に最新の情報を入手し、対応策を考えることが重要です。
経済的要因
経済的要因とは、国内外の経済状況や動向、景気や物価、金利や為替レートなど、自社の事業に影響を与える可能性のある経済的な要素です。
例えば、以下のようなものが経済的要因になります。
経済的要因は、自社の収益やコスト、資金調達や投資判断などに大きな影響を与えることがあります。
例えば、GDPや失業率などの経済指標は、自社がターゲットとする市場や顧客層の需要や消費傾向を反映します。
また、新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動の停滞は、自社のサービスや商品への需要低下や供給不足を引き起こします。
経済的要因は、自社でコントロールできないものが多いため、常に最新の情報を入手し、リスク管理や予測を行うことが重要です。
社会的要因
社会的要因とは、人口動態やライフスタイル、価値観など、社会の変化や傾向を指します。
例えば、以下のようなものが社会的要因になります。
- 少子高齢化による人口減少や高齢者市場の拡大
- 女性の社会進出やダブルワークの増加
- エシカル消費やSDGsへの関心の高まり
- ワークライフバランスや健康志向の強化
- メタバースやオンラインコミュニティの普及
社会的要因は、自社のサービスや商品への需要や消費傾向に大きな影響を与えることがあります。
例えば、少子高齢化による人口減少は、航空会社にとっては「脅威」となります。
国内市場の縮小や旅行需要の低下を招く可能性があるからです。
一方で、高齢者市場の拡大は、「機会」となります。
高齢者向けのサービスや商品を開発したり、シニア世代にアピールするマーケティングを行ったりすることで、新たな顧客層を獲得できるからです。
社会的要因は、自社でコントロールできないものが多いため、常に最新の情報を入手し、市場ニーズに応えることが重要です。
技術的要因
技術的要因とは、科学技術の発展や革新によって生まれる変化や傾向を指します。
例えば、以下のようなものが技術的要因になります。
技術的要因は、自社のサービスや商品の品質や機能、コストや効率、競争力や差別化に大きな影響を与えることがあります。
例えば、人工知能やロボットの進化は、航空会社にとっては「機会」となります。
自動化や最適化によって業務効率を向上させたり、顧客満足度を高めたりすることができるからです。
一方で、5GやIoTの普及は、「脅威」となります。
オンラインでの仕事や学習、娯楽などが増えることで、旅行需要が減少する可能性があるからです。
技術的要因は、自社でコントロールできないものが多いため、常に最新の技術動向を把握し、技術革新に対応することが重要です。
PEST分析の注意点|分析をするときに気をつけたいポイントとは?
PEST分析は、自社を取り巻く外部環境を4つの要因から分析し、自社に与える影響を把握・予測するフレームワークです。外部環境を網羅的に分析できるため、事業戦略やマーケティング戦略の策定に役立ちます。
しかし、PEST分析を行う際には、以下のような注意点もあります。
- 情報の信頼性や正確性を確認すること
- 情報の古さや新しさに注意すること
- 情報の多さや少なさに注意すること
- 自社の強みや弱みを考慮すること
- PEST分析だけでなく,他の分析手法と併用すること
情報の信頼性や正確性を確認すること
PEST分析では、政治・経済・社会・技術の4つの要因に関する情報を収集しますが、その情報が信頼できるかどうか、正しいかどうかを確認することが重要です。
情報源が不明確だったり、根拠がなかったり、偏ったりしている場合は、その情報をそのまま使うと誤った分析結果につながる可能性があります。
情報収集の際には、公的機関や専門機関が発表した統計データやレポート、新聞や雑誌などのメディア記事など、信頼性の高い情報源を選ぶようにしましょう。
また、情報が事実であるかどうか、自社に関係があるかどうか、客観的であるかどうかなどをチェックすることも忘れずに行いましょう。
情報の古さや新しさに注意すること
PEST分析では、現在だけでなく将来的に自社に影響を与える可能性のある外部環境を分析しますが、その際には情報の古さや新しさにも注意する必要があります。
情報が古すぎる場合は、現在の状況や傾向と乖離している可能性があります。例えば、数年前の経済指標や人口動態などは、今では変化しているかもしれません。
一方で、情報が新しすぎる場合は、その影響が長期的にどうなるか予測できない可能性があります。例えば、新型コロナウイルスの感染拡大は、多くの業界や企業に影響を与えていますが、その影響が今後どう変化していくかはまだ不透明です。
情報収集の際には、最新の情報だけでなく過去の情報も参考にし、時系列的な変化や傾向を把握するようにしましょう。
情報の多さや少なさに注意すること
PEST分析では、4つの要因に関する情報を収集しますが、その情報の多さや少なさにも注意する必要があります。
情報が多すぎる場合は、重要な情報を見落としたり、分析に時間がかかったりする可能性があります。例えば、政治的要因に関する情報は、国内だけでなく国際的な動向も含めて多岐にわたります。
一方で、情報が少なすぎる場合は、分析が不十分になったり、偏ったりする可能性があります。例えば、技術的要因に関する情報は、特定の分野や業界に限られている場合があります。
情報収集の際には、必要な情報だけを選別し、バランスよく分析するようにしましょう。
自社の強みや弱みを考慮すること
PEST分析では、自社を取り巻く外部環境を分析しますが、その際には自社の強みや弱みも考慮することが重要です。
外部環境の変化は、自社にとって機会や脅威となるかどうかは、自社の強みや弱みによって異なります。
例えば、新しい技術の開発は、技術力の高い企業にとっては機会となりますが、技術力の低い企業にとっては脅威となります。
また、自社の強みや弱みを把握しておくことで、外部環境の変化に対応するための戦略や施策を立てやすくなります。
例えば、自社の強みを活かして機会を最大限に利用したり、自社の弱みを補うために脅威を回避したりすることができます。
PEST分析だけでなく、他の分析手法と併用すること
PEST分析は、マクロ環境を分析する有効なフレームワークですが、それだけでは事業戦略やマーケティング戦略を策定するには不十分です。
PEST分析では、自社でコントロールできない外部環境を分析しますが、自社でコントロールできる内部環境やミクロ環境も分析する必要があります。
内部環境やミクロ環境を分析するためには、以下のようなフレームワークが使われます。
- SWOT分析:自社の強み・弱み・機会・脅威を分析する
- 3C分析:顧客・競合・自社の3つの視点から市場を分析する
- 5フォース分析:業界内の競争状況を5つの要因から分析する
これらのフレームワークをPEST分析と併用して使うことで、より深く広く事業戦略やマーケティング戦略を策定できるようになります。
まとめ|PEST分析で自社の機会と脅威を見つけよう!
この記事では、PEST分析というフレームワークについて解説しました。
PEST分析は、政治・経済・社会・技術の4つの要因に関する情報を収集し、自社を取り巻く外部環境を分析する方法です。
PEST分析を行うことで、自社の機会や脅威を見つけることができますが、その際には以下のような注意点があります。
- 情報の信頼性や有効性に注意すること
- 情報の多さや少なさに注意すること
- 自社の強みや弱みを考慮すること
- PEST分析だけでなく,他の分析手法と併用すること
PEST分析は、市場参入や事業拡大などの際に役立つフレームワークです。ぜひ、この記事を参考にして、自社の外部環境を分析してみてください。